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ほぼ日刊イトイ新聞

2024-10-11

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・全国を巡回していよいよ東京六本木にやってきた
 『さくらももこ展』、これは行ったほうがいいよ。
 さくらさんについては、ぼくも知らない人じゃないし、
 なんとなく「わかったつもり」になってたんだけど、
 わるかった、もっとずっとずっとすごい人だった。
 おもしろい人だったし、ふざけた人だったし、さらに、
 ものすごく真剣に人生を生きていた人だとよくわかった。

 ぼくもそういうイメージだったし、ほとんどの人が、
 さくらももこのマンガを「ゆるやかな線」で描かれた
 おだやかな絵だと思って見ていたのではないだろうか。
 ちょっと太めの水性ペンで描かれたような印象。
 これが、会場に展示されている原稿を見ると、
 まったくまちがっていたことがわかる。
 「ちびまる子ちゃん」の新連載のころから、
 ずっと、さくらさんの描線はものすごく細くて鋭いのだ。
 ときには「細密画」のような描かれ方もある。
 細く鋭い刃物で、ケント紙に彫刻するように
 さくらももこという作家はマンガやイラストレーションを
 描いていたのだった。
 これには、ほんとうにびっくりした。

 ま、それはこの展覧会で感じることのできる
 ほんの一部分のことなのかもしれないけれど、
 「なんでもない少女のふつうの日常」を描いていたはずの
 「ちびまる子ちゃん」の絵が、これほど強い意志を持った
 繊細なペン運びで描かれていたことに、
 あらためて、ぼくはショックを受けたのだった。
 それに気づくと、そういえばと、
 さくらももこさんという人の「秘めた強さ」みたいなもの
 についていろいろ思い出すことにもなる。
 展覧会場を祖父江慎さんに案内してもらいながら、
 「この話は、ももちゃんとしてみたい」と何度も思った。
 「なに?原稿のペンの線って、こんなにハードだったの?」
 であるとか「こんな細かい人じゃないじゃない、ふだん」
 とか、からかい口調で質問したりしたら、
 たぶん、ごまかすような笑いながらの口調で、
 「そうだよねー、偶然なっちゃったとか言えないかねー」
 なんて、妙な答え方をしてくれるような気がした。
 急にまとめる。この展覧会、とてもいいから見てください。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
全国の6つの会場を巡回してきて、東京は7つめなんですよ。


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